
34年ぶりの円安と株高。いま世界のマネーの流れが大きく変わろうとしている。その一方、国民の暮らしは物価高などで“景気回復”を実感できないまま…ニッポンが“豊かさ”に溺れたバブル期と「失われた30年」を経たいまは何が違うのか。転換点を迎えている日本経済とマネーの行方を追う。さらに日銀のマイナス金利政策解除で「金利ある世界」が復活しようとしている。長く続いた低金利に慣れた中小企業や金融機関は、未知の金利上昇時代をどう生き残るのか。ある町工場の親子と信用金庫の社員に密着。金融市場で起こり始めた地殻変動の最前線を描く。
■日本株を爆買いする“チャイナマネー” その実像とは!?
株の街、東京・兜町。取引がない閑散とした日曜日、ビルの一室に約300人が集まっていた。彼らは中国出身の個人投資家たち。日本の在留資格をもつ会社経営者や富裕層のほか、最近になって株式投資を始めたという20代の若者の姿も。実は、日本の株価上昇の一因は、こうした外国人投資家の巨額マネーに支えられているという。会合に参加していた中国出身の女性、仲さん。日本在住30年の外国人投資家だ。コロナ禍の2022年、日経平均が2万円台の時に本格的に日本株に投資。現在はトヨタなど大型株や流行の半導体関連銘柄など1億円分以上を保有しているという。実はいま、日本の在留資格を取得して中国から移り住む中国人が後をたたない。彼らが祖国を離れ、日本で投資を加速する背景とは…。
■ゴールドマン・サックスに密着!“金融の王者”が見通す日本株の暗雲
記録的な高値に沸く日本株。その先行きに警鐘を鳴らす人がいる。米大手金融機関ゴールドマン・サックスの日本法人に勤める天野一朗さんだ。早稲田大学在学中の1987年にアルバイトとして働き始めて以来、40年近くゴールドマン一筋という異色の経歴をもつ。米ブラックマンデーから日本のバブル絶頂期まで、世界のマーケットの浮沈を目撃してきた天野さん。「35年前のように、日本の株式市場が世界を圧巻したみたいなそういう時代はないかなと。日本の経済が、世界経済の中で、本当にこれからも大きく、そのシェアを高めていくというのはそう簡単ではない」と日経平均の4万円超えを悲観的にみている。そして3月、日銀がマイナス金利政策の解除を決定。再び「金利ある世界」が復活しようとしていた。そのとき、ゴールドマンのディーリングルームでは…。
■町工場に立ちはだかる“金利上昇”の壁…
東京・大田区で金属加工業を営む立昌製作所。親子4人で経営する町工場だ。60年以上の歴史があるが、それだけに建物も機械も年季が入っている。工場の建て替えを急ぎたいものの、資金は借り入れるほかない。今後、金利が上昇するという中、本当に多額の借金をしていいのか…何度も家族会議を開いていた。一方、大手信金の城南信用金庫。日銀のマイナス金利解除の決定を受けて「金利設定委員会」を開催。貸し出し金利は、ひとまず現状維持としたが、今後の上昇は避けられない。中小企業を支援する立場の金融機関として、金利上昇にどう対応していくべきなのか。川本理事長は「今こそ中小企業を全力で支える時だ」と若手社員に檄をとばす。
■「金利ある世界」復活で…中小企業の倒産が増加?
ただ、金利が上昇すれば、借入金の返済に行き詰まる企業が増えると予測されている。大手信用調査会社の帝国データバンクには、取引先の借入金に関する調査依頼が殺到しているという。帝国データは「コロナ禍の“ゼロゼロ融資”で膨らんだ債務の返済がままならず、原材料高や賃上げによるコスト増に苦しんでいる中小零細が多い。半年後から段階的に倒産が起きる」とみる。ニッポンの中小企業は「金利ある時代」をどう生き残るのか…。